第7話 |直感だけで飛び込んだ
若林からのオファーを保留にしたのは、まったく予想外の展開だったからです。
プロゴルファーなんて知らないし、ラウンドに行ったのも数回だけ。
イメージがまるで湧きませんでした。
それでも、ワクワクした気持ちがあったのも事実です。
うまくいく確信はゼロ。
「面白そう」という直感だけで飛び込みました。
飛び込んだものの、想像以上にアウェイでした。
「由美さんが変わった人を連れてきた」
「あの人、誰?」
そんな声も、一度や二度ではありません。
コロナの真っ最中、唯一買えたテイクアウトの牛丼を真っ暗な車の中で食べながら、「いつかビッグになろうね」と、売れないシンガーみたいに誓い合ったこともありました。
やめようと思ったことも、何度もあります。
一番大きかったのは、名古屋での仕事のときでした。
私が仕事の進め方の違和感を伝えても、話は平行線のまま。翌朝に続きを話したとき、彼女は「ここからは自分が変わりたい」と言いました。
あの夜と朝がなければ、私たちは間違いなくビジネスパートナーは解消していたと思います。
ただ、気持ちだけでは、仕事は回りませんでした。
若林は当初、私に「早く横に並んでほしい」と言っていました。私の立場が弱く見えるのが嫌で、周りに認めてもらいたかったからです。
でも、キャリアの浅い私が一生懸命ゴルフを覚えても、教えることはなかなか難しい。2人で模索しても、うまくいきませんでした。
行き詰まった時、先輩コーチのコーチングを2人で受けました。
それぞれの得意なこと、苦手なこと。
お互いにどうしてほしいか。
改めて話し合い、2人の役割がはっきり決まったときに事業はさらにうまく回り始めました。
教えるのは、若林。
仕組みを作り、全体を見るのは、私。
いま私はレッスン中、受講者の様子を観察して、全体の流れをチェックし、違和感があれば伝える役をしています。自分では「舞台監督」のような役目だと思っています。
舞台に立つのは若林。でもその舞台は、2人で作っています。
また、私がゴルフについて素人だったからこそ、受講者と同じ目線で見ることができる。
そこは若林と大きく違うところです。
私だからこそ、わかることがあります。
どこにつまずいて、何が難しく感じるのか。
どう教えてくれたらわかりやすくなるのか。
そこでわかったことは、初心者は「下手」なのではなく、「何から手をつければいいかわからない」だけ、ということです。


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